響け!ユーフォニアム2 12話 「さいごのコンクール」 考察
マミコの後を追ってクミコが走っていって対話する一連の流れについての考察です。
まず、クミコが姉を見つけて駆け出すカットは
画面右奥への立体的な動きをローアングルで捉えて躍動感がある。
続く、クミコが画面を左(下手)から右(上手)へ走り抜けるシーンは
部員たちがクミコを追う視線の動き(左から右へ)も相まって
画面右方向へ強いアクション・ラインが形成されている。
その影響を受けてか、走るクミコのフォローショットでは画面中心よりも右に
身体の中心線がずれて前のめり気味になっている。
続いて、会場の扉を開けて外へ出ていこうとするシーン。
外から会場の中へ入っていくる人々の群れの動き(画面左手前方向)に負けて、
一旦クミコは走るのを止めるが、もう一方の扉を自らこじ開けて出て行く。
クミコの進行方向とは逆向きの動きや扉、階段という障害を設置することで、
クミコが姉を追う気持ちの強さとアクションがより引き立っている。
会場のエキストラの容姿や動きをさんざん描いてきた甲斐があり、これらの描写が自然なものとなっているのも評価したい。
続いて、クミコがホールを出てマミコを探すシーン。
クミコのPOVカットに移り、マミコが"エスカレーター"に乗って移動していることがわかり追いかけるわけだが、追いつくまでの過程を省略している。
(おそらくクミコは”階段”を息を切らしながら駆けて行ったのだろう・・・)
エスカレーターに乗った(=流れに身を任せてラクな道を選んだ)マミコ
階段を駆け上がった(=上手くなりたいという思いで厳しい練習にも耐えて努力してきた)クミコ
という対比なのでしょうか。
続いて、マミコの徒歩のフォローショット。
クミコが走ってきた画面上の方向とは逆向きでマミコを歩かせることで、
クミコとマミコは互い違いの方向へ向かうために
クミコとマミコの間必然的に距離が生まれる。
また道路と橋の間のつなぎ目の部分が、クミコとマミコを隔てる障壁として機能していることで、叫ぶというアクションが違和感のないものとなっている。
そして、クミコとマミコの対話シーン。
クミコの言葉により、マミコが救われる様子がマミコの顔に徐々に光が差し込み影が消えることで表現されている。
ポン寄りでクミコが涙するカットに移り変わるのは、映像的にはかなり不自然に見える手法だが、クミコの涙の意味を強調するという演出でしょう。
流れに任せて自分のしたいこと抑えて生きてきたマミコだが、
そんなマミコも今はクミコと同じように実存的に生きることを選んだわけで、
それを祝福するかのようにマミコの立つ橋の上には光が差しているんじゃないかな。
1期ではクミコは周りの人たち、特にレイナの熱気に感化されて吹奏楽を続けてきたようなフシが有ります。でも、今回のお話では周りに流されて演奏を続けているのではないことがわかります。
すべては音楽との出会いの機会を与えてくれた姉のおかげ
そんな素晴らしいプレゼントを与えてくれた恩人が悲しい結末を迎えてほしくはないもものです。
だから、クミコは姉に感謝の気持ちを伝えたのではないかな。
時間的には短いシーンですが、動線の使い方や構図など見どころがたくさんある名シーンだと思います。